植物生態学者だった父は、ユネスコの国際生物学事業計画(IBP International Biological Planning)に日本から参画していた。これは、その活動をまとめた1970年の広報用小冊子からの抜粋である。
今、これに付け加えるべき事は、何と言っても、放射能汚染の広がりだろう。既に、拡散した汚染量としては、フクシマ(日本)が一位、チェルノブイリ(旧ソ連 → ウクライナ)が二位となっているデータも多い。
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現在の環境汚染は、都市の大気汚染や公害病のように局地的現象にとどまらず、仝地球的規模の影響をひきおこしている。自動車排気に由来する鉛や農薬は極地の氷や生物体にさえ急速に蓄積しつつあるし、石油・石炭の大量消費による大気中の炭酸ガスの増加、自動車排気がもたらした大気中の浮遊微粒子の急増、海面の石油汚染などは、それぞれ赤外線の吸収、太陽輻射の遮断、海面蒸発の抑制を通じて、全世界の気候を変えつつある。
たとえば、石油消費の加速度的増加は大気中の炭酸ガス濃度をふやし、21世紀はじめには現在の濃度の25%増しとなると推測される。現在の濃度の倍に達したとき、それのみで地球表面の平均気温は2℃くらい高まり、極地の氷床がとけて、海水面を数メートルも上昇させるだろうという。自動車排気や海面汚染の気候への影響も、それにおとらず深刻なものと予測されている。
近い将来の環墳汚染の程度については、さまぎまの予測がおこなわれ、危機感がさけばれているが、その予測は科学的にはまだきわめて不完全である。いまの時点でもっとも必要なのは、地球物理学・地球化学・生態学などの地球諸科学の協力によって、すみやかに環境変化の理論をうちたてる一方、それをうらづけるべき環境観測データを全地球的な観測網によって充実してゆくことである。